今回の民法改正において、債権者代位権の訴訟告知について規定する民法423条の6が新しく設けられています。
民法423条の6の規定
民法423条の6は、以下のとおりです。
債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
以下において、この規定に関して、解説したいと思います。
訴訟告知が必要になったこと
民法423条の6は、債権者が、債権者代位権を行使する権利について裁判を起こした場合には、債務者に対して訴訟告知をしなければならないと規定しています。
訴訟告知とは
訴訟告知とは、裁判の当事者になっていないが、裁判に参加することができる第三者に対し、裁判になっていることを通知することです。
訴訟告知を受けた第三者が、その裁判に参加するかどうかは自由ですが、判決が第三者に不利な結果になった場合に、その判決の効力が第三者に及ぶことになります。
つまり、訴訟告知を受けた第三者は、不利な判決の効力を受けるのが嫌であれば、裁判に参加して有利な判決になるように一生懸命主張・立証すれば良いのです。
そのような機会が与えられるのが訴訟告知です。
なぜ債権者代位権で訴訟告知をしなければならないのか
それは、債権者が債権者代位権を行使して第三債務者に対して起こした裁判の判決は債務者に対しても効力が及ぶからです。
債権者代位権の債権者は、株主代表訴訟で会社の権利を会社に代わって行使する株主と法的に同じだと考えられています。
つまり、第三者である債権者や株主が、本人(債務者や会社)に代わって、本人の権利を裁判上で行使することが認められているという点で同じなのです。
これを法律用語で、法定訴訟担当といいます。
この場合、債権者や株主が裁判を起こした結果の判決は、本人である債務者や会社に対して拘束力(効力)があるとされています(民事訴訟法115条1項2号)。
そうすると、債務者は、自分の知らないところで自分に不利な判決が出され、それに拘束されるのでは、たまりません。
そこで、新しい民法423条の6において、債権者代位権を行使する裁判が起こされた場合には、債権者が裁判に参加する機会を与えるため、訴訟告知をしなければならないことになったのです。
ちなみに、株主代表訴訟については、以前から株主が会社に訴訟告知をしなければならないという規定が会社法にありました。
ところが、債権者代位権については、改正前はそのような規定がありませんでした。
それでは、債務者にとって不利益が大きく問題であるという観点から、今回の改正による条文の新設になったのです。
訴訟告知をしないと、どうなるか。
本条の規定に従わず、債権者が訴訟告知をしなかった場合に、どうなるかについては、明記されていません。
ただし、裁判の提起自体が違法ということになり、訴えが却下されると考えられています。
とはいえ、裁判官も、訴訟告知をしない債権者に対し、いきなり訴えを却下するのではなく、「訴訟告知はしないのですか」ぐらいのことは言ってくれると思いますので、それほど心配は要らないと思います。
債務者はどのように参加するか
かなり難しい話になりますが、債務者はどのような形で債権者代位権の裁判に参加するかという問題があります。
一般的に、既に係属している裁判に途中から参加する場合、補助参加、独立当事者参加、共同訴訟参加のいずれかになります。
そして、債務者が、どちらの味方をするかによって変わってきます。
債務者が、債権者代位権を行使した債権者に敵対し、債権者代位権の行使は認められないという主張をしつつ、第三債務者に対して自分へ債務を履行するよう請求する場合には、独立当事者参加という形式で参加することができます。
それ以外の多くの場合は、補助参加、共同訴訟参加のいずれかによって参加することになると思います。
ルール変更であること、経過措置
民法423条の6は、これまで規定されておらず必要とされていなかった訴訟告知をしなければならないとするものであり、これまでのルールを変更するものです。
このルール変更については、改正附則において、施行日(令和2年4月1日)以前に、債務者に属する権利が生じていた場合には、従前の例による旨規定されています。