民法(債権法)改正の解説67 [民法415条2項] 填補賠償請求

今回の民法改正で、填補賠償請求について規定する民法415条2項が新設されました。

民法415条2項の条文

民法415条2項の条文は、以下のとおりです。

前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。


以下において、解説したいと思います。

填補賠償請求

415条2項は、同条1項で債務不履行による損害賠償請求が規定されていることを受け、「債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる」場合を規定しています。

スポーツカー.jpg

この債務の履行に代わる損害賠償請求のことを填補賠償請求と言います。

填補賠償請求とは、例えば、Cが中古車ディーラーDで中古スポーツカーを購入した後、そのスポーツカーが車庫の火災で焼失してしまい履行不能になった場合に、Dのスポーツカーを引き渡す債務の代わりにCがDに対してそのスポーツカーの価値を損害賠償請求することです。
既にCが代金を支払っていたのであれば、単純にそのスポーツカーの価値を支払ってもらうことになります。
Cがまだ代金を支払っていないのであれば、Dはスポーツカーの価値から代金を相殺することができます。そうすると、スポーツカーの価値が急に高騰していないかぎり、賠償額はそれ程高額にはならないと思われます。

この填補賠償請求については、改正前の民法では明確な規定がありませんでした。

ただし、民法415条で履行不能の場合に損害賠償請求が認められることが規定されていたため、履行不能の場合には填補賠償請求をすることができるものと解されていました。
契約が解除された場合にも、填補賠償と同じ処理になることが認められていました。

そこで、填補賠償請求が認められる場合を明確にするため、条文で規定されることになりました。

填補賠償が認められる場合

415条2項で填補賠償が認められているのは、1項で債務不履行による損害賠償請求ができる場合で、さらに以下の要件に該当するときです。

①債務が履行不能のとき
②債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
③契約が解除されたとき、または解除権が発生したとき

①履行不能のとき

履行不能のときに填補賠償請求をすることができることは、改正前から認められており、異論がありません。

②債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したとき

債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したときに関して、下級審の裁判例ですが、履行不能と同一の法律的評価を受けても良いとされ、催告なしに契約を解除できると判断されたものがありました。
この判例を受けて、填補賠償請求を認めても良いものと考えられました。

なお、ただ債務者が履行を拒絶すると発言しただけでは足らず、履行を拒絶する意思が終局的・確定的であることが必要であると解されています。

③契約が解除されたとき、または解除権が発生したとき

改正前から、契約が解除されたときに、填補賠償請求が認められるものと解されていました。

さらに、解除されていないものの、解除権が発生しているときにも、解除の意思表示をせずとも、填補賠償請求が認められて良いと考えられました。

このいずれの場合にも、填補賠償請求が認められることになりました。

経過措置

改正民法の施行日である令和2年4月1日より前に債務が生じた場合、同日後に債務が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前に行われた場合は、改正前の民法の適用を受けます。

法律行為(契約)も、債務の発生も、令和2年4月1日以降の場合に、改正後の民法415条2項が適用されます。

 

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