履行の強制について規定している民法414条が改正されています。
民法414条の条文
改正前の414条は、以下のとおりでした。
1 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、、この限りでない。
2 債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
3 不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。
4 前三項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
改正後の条文は、以下のとおりです。
1 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
改正後の414条は、改正前の414条を概ね踏襲しています。
以下において、解説したいと思います。
改正後の414条1項について
改正後の414条1項は、債務者が債務を履行しないときに債権者が履行請求権を認められ、それを強制執行の手続により強制できることが規定されています。
このような制度は、当然のようですが、諸外国には損害賠償しか請求できず、債務それ自体の強制的な履行が認められていない国もあります。
また、414条では、その方法について、「直接強制、代替執行、間接強制その他の方法」と規定されています。
直接強制については、金銭債権の場合の財産差押えや、不動産の引渡し・明渡し債権の場合の強制執行、動産の引渡し債権の場合の強制執行があり、民事執行法に規定されています。
代替執行とは、行為債務について債権者が第三者にやらせて費用を債務者から取り立てる方法による強制執行です。
建物収去請求の場合に、債権者の申立てで解体業者に建物収去をさせることができます。
間接強制とは、裁判所が債務者に「履行しなければ1日1000円を支払え」と命じて間接的に強制させるものです。
その他の方法には、意思表示の擬制等があります。
意思表示の擬制とは、意思表示をすべきことを命じる判決が確定したとき等に、意思表示がなされたことになるものです。
農地売買の許可申請を売主がしない場合に用いられます。
414条1項ただし書きで、債務の性質が許さないときは、履行の強制ができないことが規定されています。
性質上強制履行が許されない債務として、夫婦の同居義務、婚約に基づいて入籍させること、芸術家に作品を創作させることなどがあります。
改正前の414条1項について
改正前の414条1項は、改正後の414条1項とほぼ同じ規定です。
改正前の414条2項、3項が削除されたことに伴い、若干の体裁が変更されています。
改正後の414条2項について
改正後の414条2項は、債権者が履行の強制をした上で、填補されていない損害があれば、損害賠償を請求することができる旨が規定されています。
改正前の414条4項の条文の内容が、そのまま改正後の414条2項になっています。
改正前の414条2項、3項が削除されたからです。
改正前の414条2項、3項の削除
改正前の414条2項、3項は削除されています。
改正前の414条2項本文は、作為を目的とする債務の代替執行を規定し、同条2項ただし書きは意思表示の擬制を規定していました。
また、改正前の414条3項は、不作為を目的とする債務について、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる旨を規定していました。
これらの2項、3項は、強制執行の方法についての規定であり、手続法である民事執行法に規定すべきものであり、実体法である民法にう規定すべきではないという批判がありました。
この批判を受け、2項、3項は、削除されました。
これに伴い、民事執行法171条1項などが改正されています。