民法365条が今回の改正により削除されています。
民法365条の規定
民法365条は、以下の規定でした。
指図債権を質権の目的としたときは、その証書に質権の設定の裏書をしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。
この規定は、指図債権に質権を設定した場合の第三者対抗要件を定めたものです。
指図債権
指図債権は、証券と債権がセットになっている証券的債権の一つです。
指図債権とは、証券に記載されている者 またはその者によって指定された者に対して弁済すべき債権のことです。
約束手形は、指図債権と同種のものといえます。
ただ、約束手形については、手形法で詳細な規制がされており、その他の同種の有価証券についても商法や小切手法等の規制を受けています。
したがって、指図債権についての民法上の規定は、実際上の意味が乏しいと言われています。
裏書が質権設定の対抗要件であること
365条では、指図債権を質権の目的とする場合、その証書に裏書をすることで、第三者に対抗することができる旨が規定されていました。
裏書とは、証券の裏に、新たな権利者等を記載することです。
この裏書なければ、第三者に対抗することができないものとされました。
365条の削除
今回の改正で、民法365条は削除され、新たな規定が設けられることもなく、365条は空白となっています。
改正の際、指図債権などの証券的債権の規定が全て削除されました。
その代わり、「第7節 有価証券」という有価証券に関する新たに設けられました。
改正後の規定
改正前の365条を実質的に受け継いでいる規定は、指図証券の質入れに関する520条の7、520条の2といえます。
指図証券は、指図債権のように、証券に記載されている者 またはその者によって指定された者に対して弁済すべき有価証券のことです。
520条の7は、指図証券の質入れについては、指図債権の譲渡等に関する520条の2~6の規定を準用する旨を規定しています。
そして、520条の2は、指図債権の譲渡は、証券に裏書をして交付しなければ効力を生じないと規定しています。
これにより、指図証券の質入れについても、証券に裏書をして交付することが効力要件となります。
効力要件とは、有効になる要件です。
この点、改正前の365条では、裏書は対抗要件であり、効力要件ではありませんでした。
しかし、証券がセットになっている指図債権では、裏書は必須のはずであるにもかかわらず、効力要件ではないことに批判がありました。
この批判を受け、実質的内容も改正されているといえます。