債権質の対抗要件を規定している民法364条が改正されています。
改正後の364条は、以下のとおりです。
債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は、第467条の規定に従い、第三債務者にその質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
以下において、この条文について解説します。
債権質の対抗要件
民法364条は、債権を目的として質権を設定する場合、民法467条が規定する債権譲渡の対抗要件と同じ手続を踏むことで、質権の対抗要件が認められることを規定しています。
債権質の場合、以下の2種類の対抗要件があります。
第三債務者への対抗要件
質権の目的である債権の債務者に対して、質権を対抗できるかどうかという問題です。
質権の目的である債権の債務者については、法律上、第三債務者と言われています。
質権者の有する債権の債務者と区別するためです。
第三債務者への対抗要件は、民法467条1項の規定に従い、第三債務者への質権設定の通知・第三債務者からの質権設定の承諾のいずれかがあることが必要となります。
いずれかがあれば、質権者は第三債務者へ質権設定を対抗することができます。
重複の質権設定や二重譲渡を受けた第三者への対抗要件
もう1つは、同じ債権について別の第三者にも質権が設定されるという質権設定の重複や第三者に譲渡される二重譲渡のような場合に、その第三者に対して対抗することができるかどうかという問題です。
この場合には、民法467条2項の規定に従い、第三債務者への質権設定の通知・第三債務者からの質権設定の承諾が確定日付ある証書によって行われることが必要です。
内容証明郵便によって通知がされることは、確定日付ある証書に該当します。
したがって、一般的には、内容証明郵便による通知を第三債務者に対して行うことにより対抗要件具備がされることが多いです。
改正前の364条からの変更点
改正前の364条は、「指名債権を質権の目的としたときは、第467条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者そのほかの第三者に対抗することができない。」という規定でした。
改正に伴う変更点は、以下のとおりです。
単なる債権という呼称になったこと
改正前は「指名債権」と記載されていましたが、改正後は単に「債権」になりました。
この点、改正前は、証券的債権である指図債権と区別するため、それ以外を指名債権と呼んでいたものです。
今回の改正で、ほとんど有名無実とされている証券的債権の規定はなくなり、代わって有価証券についての規定が加わりました。
これにより、指名債権という呼称を使う必要がなくなり、単に「債権」と呼ぶことになったのです。
将来債権の質権設定が明記されたこと
今回の改正で、(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)という括弧書きが加わりました。
これは、今回の改正で追加された466条の6によって、「現に発生していない債権」、つまり将来債権の譲渡が有効であることが明記されたことに伴うものです。
この括弧書きの記載により、将来債権を目的とする質権設定が有効であり、通常の債権質と同様の対抗要件になることが規定されています。