民法(債権法)改正の解説49 [民法316条] 不動産賃貸の先取特権と敷金

民法316条が改正の対象となっています。

以下、解説いたします。

改正後の316条

改正後の316条の規定は、以下のとおりです。

賃貸人は、第622条の2第1項に規定する敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。


この316条は、「第2款 動産の先取特権」のなかにあります。

動産の先取特権とは、債務者の動産を差し押さえて優先的に弁済を受けることが法律上認められている権利のことです。

不動産賃貸の先取特権

316条は、動産の先取特権の一つとして認められている不動産賃貸の先取特権に関する条文です。掛け軸.jpg

不動産賃貸の先取特権とは、動産の先取特権の一種であり、不動産の賃貸人が賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務について、賃借人の動産を差し押さえて優先的に弁済を受けられる権利です。
民法312条で規定されています。

建物の賃貸人は、賃借人がその建物に備え付けた動産について、差し押さえて先取特権を行使することができます(民法313条2項)。
土地の賃貸人は、土地または建物に備え付けられた動産、土地の利用の今日された動産、賃借人が占有する土地の果実について、差し押さえて先取特権を行使することができます(民法313条1項)。

実際に差押えをするには、裁判所に申立てをして、裁判所によって認められることが必要です。
先取特権を行使する場合には、訴訟を起こす必要はありません。

さらに、上記の316条により、賃貸人が敷金を受け取っている場合は、敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ、差し押さえて先取特権を行使することができる旨が規定されています。
つまり、敷金で担保される部分は、敷金から支払を受ければ良いため、先取特権の行使は認められないということです。

改正内容

改正前の316条は、以下の条文でした。

賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。


このように、今回の民法改正で変更されているのは、「敷金」の言葉の前に「第622条の2第1項に規定する」という言葉が追加されていることです。

改正前は、敷金について総論的に規定した条文がありませんでした。

今回の改正では、敷金について総論的な規定を設けることが必要ということが議論されました。

これにより、民法622条の2第1項として敷金の総論的な規定が追加されたことから、その「622条の2第1項に規定する」という文言が「敷金」の前に追加されたのです。

したがって、316条の改正は、ごく形式的な改正であり、実質的な変更はないと思います。

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