続いて、民法166条2項、3項についても改正されています。
改正後の民法166条2項、3項の条文は、以下のとおりになっています。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前2項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
以下、それぞれ解説していきます。
166条2項について
166条2項は、債権でもなく所有権でもない財産権の消滅時効を規定しています。
債権については、166条1項で、5年または10年の消滅時効になることが規定されています。
所有権は、消滅時効にかかりません。
これ以外の財産感については、権利を行使することができる時から20年間行使しないときに時効で消滅することが166条2項で規定されています。
例えば、地上権や地役権のような物権は、20年間権利を行使しないでいると時効で消滅します。
この点、改正前の167条2項で、「債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。」と規定されていました。
したがって、改正後の166条2項は、改正前から内容的に同じです。
なお、取消権や解除権という形成権は、債権でも所有権でもない財産権として、166条2項が適用されそうです。
しかし、改正前の判例ですが、解除権については、債権に準じて10年の消滅時効期間になるとの最高裁判例があり、改正後もこの判例が踏襲されるものと思われます。
取消権については、民法126条で原則5年の消滅時効期間になることが規定されています。
166条3項について
166条3項は、条文を読んでも分かりにくい規定だと思います。
例えば、XがYからA土地を購入する契約をし、3か月後の代金支払時に所有権移転・引渡し・登記移転をすることになったところ、Zが契約の1週間後にA土地を勝手に占有し始めたとします。
この場合、XのA土地に対する権利は「始期付権利」であり、3か月後の代金支払時にならないと権利を行使することができません。
それでも、Zの取得時効は占有開始時から進行するというのが166条3項本文が規定していることです。
166条3項ただし書きは、「権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。」という規定です。
これは、上記の例で、XはZの取得時効の更新のため、Zに対し承認を求めることが認められたものです。
これにより、Xは、代金支払前でも、Zの取得時効を防ぐ手段をとることができるわけです。
これを認めないと、売主のYは売った土地について何も手続をとってくれないことが考えられるため、X自らがとることができる手段が認められました。
166条3項の規定は、改正前の166条2項の規定がほぼ踏襲されたものであり、実質的な変更はありません。