相続法改正の解説31 [民法899条の2第2項] 特別な対抗要件

民法899条の2第2項について

前回の民法899条の2第1項に続き、民法899条の2第2項を解説したいと思います。

新設された民法899条の2の条文は、以下のとおりです。

前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。


新設された民法899条の2第1項によって、法定相続分を超えた部分の相続通知書.jpg
について、登記などの対抗要件を備えないと第三者に対抗できないという対抗要件主義が採用されることになりました。
これを受け、相続によって債権を取得した場合に備えるべき特別な対抗要件の内容を規定したのが、民法899条の2第2項です。

法定相続分を超えて債権を取得した相続人は、債権にかかる遺言・遺産分割の内容を明らかにして当該債権を取得した旨の通知を債務者に対して行うことで対抗要件を備えることができることになりました。
債権の対抗要件については、債務者に対する対抗要件と、第三者に対する対抗要件がありますが、上記通知を確定日付ある証書によって行うことで債務者に対する対抗要件も第三者に対する対抗要件も合わせて備えることができます。
確定日付ある証書による通知とは、内容証明郵便によって通知を出せば該当します。

特別な対抗要件が認められた理由

本来、債権譲渡の対抗要件は、債権の譲渡人が債務者に対して債権譲渡した旨の通知をするか、債務者が債権譲渡を承諾したことが必要です。
相続の場合、債務者が承諾しないかぎり、譲渡人にあたる被相続人の地位を包括的に承継した共同相続人全員が債務者に通知をすることが必要になります。
しかし、共同相続人は、そのような通知を出す義務がないため、通知を出してもらえない可能性が高くなります。
そうすると、法定相続分を超えて債権を取得した相続人の地位が非常に不安定になるため、その相続人が単独で対抗要件を備える方法を認める必要がありました。

そこで、法定相続分を超えて債権を取得した相続人は、債権にかかる遺言・遺産分割の内容を明らかにして債権を取得した旨の通知を債務者に対して行うことにより、他の共同族人の協力を得られなくても単独で対抗要件を備えることが認められたのです。

遺言・遺産分割の内容を明らかにすることの要件

遺言・遺産分割の内容を明らかにすることが対抗要件として必要になっているところ、遺言書や遺産分割協議書の交付が必要とまでは規定されていません。
ただし、相続法改正の法制審議会民法(相続関係)部会では、債務者をして、客観的に遺言等の有無やその内容を判断できるような方法(例えば、受益相続人が遺言の原本を提示し、債務者の求めに応じて、債権の承継の記載部分について写しを交付する方法)をもって通知することでも足りると説明されており、一定の資料の提供が想定されている記述が残っています。
厳密に、どこまでしないと対抗要件として認められないかについては、今後の裁判所の判断が待たれるところです。

以上のとおり、債権を相続で取得した場合の対抗要件は、共同相続人全員からの債務者への通知か、債権を取得した相続人単独での遺言・遺産分割の内容を明らかにしての債務者への通知のいずれかによることが認められました。お

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