民法(債権法)改正の解説33 [民法151条1項] 協議を行う旨の合意の時効の完成猶予①

民法151条について

民法150条に引き続き、151条が改正されています。

改正後の151条は5項まであり、条文も長文のため、まず改正前の151条と改正後の151条の概要を解説したいと思います。

改正前の151条について

改正前の151条は、「和解の申立て又は民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、1か月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。」という規定でした。

この和解・調停の申立ては、改正前の民法147条1号の「請求」に含まれ、時効中断が認められていました。
ただし、改正前の151条で、相手方が出頭しない場合、和解・調停が不成立の場合は、1か月以内に訴えの提起をしなければ時効中断の効力が認められない旨規定されていました。

この和解・調停の申立てについては、今回の改正で、基本的に147条に集約されています。
147条1項で、訴え提起前の和解・調停の場合に時効の完成猶予の効力が認められ、同条2項で和解・調停が成立した場合の時効の更新の効力が認められています。

なお、改正前は、相手方が出頭しない場合、和解・調停が不成立の場合は、1か月以内に訴えを提起しなければ時効中断の効力を生じないという規定でしたが、今回の改正で、相手方が出頭しない場合や、和解・調停が不成立の場合でも、手続終了時から6か月間は時効が完成しないという時効完成猶予の効力が認められることになりました。

改正後の151条1項

改正後の民法151条1項の規定は、以下のとおりです。

権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げるときのいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から1年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時。
三 当事者の一方から相手方に対してその協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6か月を経過した時

改正後の151条は、協議を行う旨の合意による時効の完成猶予という全く新しい制度を規定しています。

改正前は、時効を中断させるためには、結局、訴訟提起等の法的措置をとるか、相手方が権利を承認するかが必要でした。
そうすると、相手方と権利関係や金額について協議を行っている途中で、時効の完成が近づくと、時効中断のため、訴訟提起等を検討せざるを得ず、お互い裁判を望まない場合には非常に不便でした。

そこで、今回の改正において、当事者間で協議を行う旨の合意を書面で行った場合には、一定期間の時効の完成猶予が認められることになり、新たな時効完成猶予の制度が創設され、協議中の当事者にとって便利になりました。

151条1項の具体的内容

151条1項で、当事者間で権利について協議を行う旨の合意が書面でされた場合は、以下のいずれか早い時まで時効の完成が猶予されます。協議.jpg
①合意があった時から1年を経過するまで
②合意で協議を行う期間を1年未満で定めたときは、その期間中まで
③当事者一方が相手方に対し協議の続行を拒絶する旨の書面の通知がされたときは、その通知の時から6か月を経過するまで

合意の書面について、その様式は定められていません。
当事者双方の協議を行う旨の意思が書面で示されていれば、当事者の署名や記名押印も必要ではないとの見解もありますが、合意の書面ですので、通常は署名や記名押印がされると思います。

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