民法122条について
取り消すことができる行為の追認について規定している民法122条が改正されています。
改正後の民法122条の規定は、以下のとおりです。
取り消すことができる行為は、第120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
改正前の民法122条では、この規定の後に、「ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。」というただし書きが付いていましたが、今回削除されたものです。
改正後の民法122条について
改正後の民法122条は、錯誤・詐欺・強迫による意思表示や、未成年者や成年被後見人等の制限行為能力者による行為のように取り消すことができる行為について、取り消すことができる者によって追認されることで意思表示・行為が有効であることが確定し、以後取り消すことができなくなるということを規定しています。
そもそも、錯誤・詐欺・強迫による意思表示や、未成年者や成年被後見人等による行為は、取り消されれば初めから無効になりますが(民法121条)、取り消されない限りは一応有効なものとして取り扱われます。そのような不確定な状態にあります。
そして、取り消せば確定的に初めから無効となり、追認すれば確定的に有効となるのです。
例えば、未成年者が親権者の同意なく中古車を250万円で購入する契約をしましたが、後でそのことを知った親権者が調査したところ、その中古車の価値が上がり、400万円になったことが分かったので、親権者は未成年者が250万円で中古車を購入した契約を追認して確定的に有効にすることができるのです。
追認することができる者は、「第120条に規定する者」とされています。
民法120条は、取り消すことができる行為の取消権者を規定していますので、取消権者が追認することもできるということになります。
ちなみに、制限行為能力者の行為については、制限行為能力者本人、その代理人(親権者、後見人等)、承継人(相続人等)、同意権を有する者が取消権者であり、追認することもできます(120条1項)。
錯誤・詐欺・強迫という瑕疵ある意思表示については、瑕疵ある意思表示をした者本人、その代理人、承継人が取消権者であり、追認権者です(120条2項)。
取り消すことができる行為について、追認権を有する者の誰か一人が追認すれば、行為が有効であることが確定し、もはや誰も取り消すことはできません。
改正前の122条ただし書きの削除
上記のとおり、改正後の122条ただし書きが今回の改正で削除されています。
ただし書きは、「ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。」という規定でしたが、学説は以前から不要な規定としていました(通説)。
つまり、追認は、不確定ながらも一応有効なものとして取り扱われている行為を確定的に有効にするだけですので、追認そのものが第三者の権利を害することはなく、取り消すことができる行為が確定的に有効になることでその行為をした者と第三者との間で利害の対立があったとしても、民法のその他の規定の適用により処理すべきものです。
よって、もともと民法122条ただし書きは死文化していました。
ですので、今回の改正で民法122条ただし書きが削除されたことは当然のこととされており、これまでの実質的運用に変更はありません。
経過措置について
施行日(令和2年4月1日)前に取り消すことができる行為が行われた場合には、改正後の122条ではなく、改正前の122条が適用されます。